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【まるで魔法?】気になる前歯の隙間。無かったことにできたら、すごくないですか?〜Case2~

こんにちは。「デンタルサロンの窓から」へようこそ。歯科医師の松浦直美です。

今日は、前回に引き続き、「前歯の隙間をコンポジットレジンで埋める」というお話です。

前歯の隙間と、コンポジットレジンについての前回の記事はこちら↓

 

そもそも、どうして前歯に隙間ができてしまう方がいるのでしょう?
以下の原因が考えられます。

〈若い頃から隙間がある場合〉
1。歯と顎の大きさの不調和
2。生まれつき歯の数が少ない、またはとても小さい歯(矮小歯)があり、そこに隙間が開く
3。口呼吸などで唇がしっかり閉じられずに、歯が出歯になり、隙間が開く

〈始めは隙間がなかったのに、だんだん隙間が空いてきた場合〉
1。歯周病で、歯を支えている骨が弱くなり、歯が動いて隙間が空いてきた
2。抜歯や、不適切な被せ物の治療などで歯の数が減ったり人工的に隙間ができてしまった
3。噛み締めや食いしばり、または舌の癖などで、歯が動いて隙間ができた

*ご注意:お子様の場合で、乳歯から永久歯に生え変わる時期に前歯の隙間が空いているのは、「歯間離開」とは言いません。ごく一時的なものである場合が多く、この症状に対し、早期矯正治療が必要かどうかは、慎重に見定める必要があります。

今回お話ししている「コンポジットレジンによる歯間離開の閉鎖」は、若い頃からある生まれつきの隙間に対して、特に有効な方法です。


もちろん、症状の強さによって、この治療方法以外の方法がより適している場合もありますので、ご自分の状態はどうなのかな、と具体的なアドバイス

さてさて、今日は、上の原因の中でも一番上にあります「歯と顎の大きさに不調和があり、隙間が空いている」Mさんです。この隙間のおかげで、なんとも言えない愛嬌があって可愛らしいのですが、本人はひどく気にしていました。


 

上にも下にも隙間が空いていて、とても気になっているのですが、経済的な理由と、時間がかかると言う問題から、矯正治療には踏み切れなかった40代の女性です。


Mさん:最低でも上の歯の隙間を閉じたいです。小さな歯の方を削って、セラミックを被せたらどうかしら?」

私:それも確かに綺麗にできるでしょうね〜。でも歯をだいぶ削らなければなりませんよ。

M:え、虫歯でもないのに、そんなに削らなければならないのですか?

私:はい、被せ物をするために、歯を一周ぐるりと削らなければなりません。噛み合わせなどに問題なければ、表側だけを削る「ラミネートベニア」という方法もありますが、そちらも大切な一番表層にある「エナメル質」を削らなければいけないことに変わりはありません。

写真でおわかりのように、Mさんの歯は虫歯や、古い治療跡もなく、つやつや、ぴかぴかなエナメル質(歯の一番外側にあるつややかで硬い組織)に覆われた健康な歯です。この歯を削るのは、なんとももったいない。

余談ですが、私はいつも「6倍」の拡大鏡をつけて、歯の治療をしています。大きく大きく拡大された歯は、美しい部分も美しくない部分もさらけ出しますが、健康な歯はエナメル質の透明感がさまざまな光り方をして、本当にオパールなどの宝石のように綺麗だなあ、と思うことがあります。患者さんが比較的若く、このように歯が綺麗なうちは、極力削らないようにしたいと常々思っています。

というわけで、この方は、「やはり歯を削りたくない」というご希望もありましたので、コンポジットレジンによるダイレクトボンディングでの空隙閉鎖を提案しました。詰め物で歯と歯の隙間を埋める場合は、ある程度歯が大きくなります。この際、あまり不自然にならないように、治療の前にバランスを考えてデザインし、その後模型を作り、「ワックスアップ」といって、ろうそくの「ろう」のような材料で、模型に実際に足して準備します。


ワックスアップされたデザインを元に、実際に歯を作っていきます。
コンポジットレジンで隙間が綺麗に閉じられた状態が下写真です。

歯を全く削らずに、コンポジットレジンを足していくことで、このくらいの自然な再現ができます。

麻酔なし、歯の切削なし、治療時間50分です。

もう一度、ボンディングまえの写真を載せます。


自分でも、まるで魔法?と毎回思います。


コンポジットレジンによるダイレクトボンディングは、MI(Minimal Intervension:最小限の侵襲)治療の一つで、世界中で取り組まれている最新の歯科治療です。


もちろん良いことばかりではなく、セラミックなどとちがい多少の経年劣化、変色、微細な欠けなどがみられることがあり、メインテナンスで研磨をしたり、修正をしたりと言った「手入れ」が必要です。


しかし、適切な最小限の手入れを行いながら、大きく歯を削ることなく、最後まで使うことができれば、それは素晴らしいことではないでしょうか。


MI治療は、家の建築に例えると、経年劣化のあまりみられず償却もとても長い「鉄骨」などの建物(大きく歯を削ってしっかりと被せる治療)に対して、少しずつ手を加えながら、じっくりとご自分の家に向き合っていく小さな木造住宅のようなものかもしれません。少しずつとは言っても家の手入れには大きなお金がかかりますが、コンポジットレジンの手入れや、メインテナンスに通うための費用は大きくはありません。


どのような治療方法を選ぶかは、その方の症状と、お考えを加味して、歯科医師と一緒に考えていただきたいと思います。


MI治療を選ばれる場合は、上記のお話を、少しだけ、思い出してくださいね。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。


症例写真は、Mさんのご厚意のもと、ご了承を得てブログで紹介させていただいております。ご協力に心より感謝いたします。