こんにちは。副院長の松浦直美です。
2018年というと、今から6年も前!
私は、いわゆる「白い詰め物」を利用して、虫歯治療をなるべく歯を削らずに行うという
ダイレクトボンディングという手法を学ぶため
月に一回、約1年の時間をかけて、静岡県の浜松市に通っていました。
*ダイレクトボンディングは、保険適用街です
岩手から浜松まで、どうやって行くかって?
まずは、新幹線で盛岡駅から東京駅まで、東北新幹線で2時間ちょっと
そして、東京からは東海道新幹線に乗り換えて、さらに2時間ほど。
土日の週末を使って、日曜の夜の帰りはいつも夜10時過ぎ。
今より6歳若かったとはいえ、どっぷり疲れていました。
この「遠さ」と「疲労」を飲み込んでも
月に一回、約1年にも及ぶこの価値ある研修を受ける決意をしたのは
「歯をあまり削らなくて済む」という概念をきちんと学びたかったのと
何より講師の方の症例が驚くほど美しく、衝撃を受けたから。
現在、この診療は当院でもとても喜ばれ
本当にあの時習得してよかったと、心から思っています。
そのダイレクトボンディングがアップデートされていると聞いて
先週末、久しぶりに浜松まで、新幹線を乗りついて研修に行ってまいりました。
ダイレクトボンディングの魅力を、下にまとめてみます。
型を取らなくてもよい
虫歯治療といえば、型をとって、技工士さんに人工の歯を作ってもらって
それをまたくっつけて
という工程があることが多いですよね。
歯科医院に通う回数が増える上、どうしても微妙な誤差が生まれてしまうため
取れてしまったり 隙間からバイ菌が入って2次的な虫歯が
できてしまうこともあります。
ダイレクトボンディングは、専用の美しい白いペースト状の材料を
強固な接着技術を使って直接歯にしっかりと接着させるため
1回の治療時間は少し多くかかりますが
一度の来院で終了できるところが大きな魅力の一つです。
まるで魔法のような美しさ
日本が誇る接着技術を用いて歯に直接材料をくっつけるダイレクトボンディング。
材料は、「コンポジットレジン」と言って、保険治療でも使われている樹脂の材料です。
え、保険治療と同じ材料??と驚かれる方もいらっしゃるかも知れませんが
保険外治療専門に開発されたコンポジットレジンは、その強さと美しさが桁外れ。
そして、詰め方のポイントを習得し、専用の機材で丁寧に研磨することで、本当に美しく輝き
しかもご自分の歯との継ぎ目が全くわからなくなります。
「魔法みたい!」と驚く方多数の、すばらしい技法です。
金属の下で虫歯になっていた歯を、ダイレクトボンディングで修復
歯を全く削らないか、削っても最低限
何と言ってもこれが、ダイレクトボンディングの1番の利点です。
接着の技術を最大限に生かして歯に直接材料を接着させるため、歯を削る量は最低限。
虫歯治療であれば、本当に虫歯になっている悪いところのみ。
型を取る治療法であれば、便宜的に悪くない部分も大きく削らなければならない事もあるのですが、ダイレクトボンディングなら、そんなことは必要ありません。
また、審美目的で、歯と歯の隙間を閉じる「空隙閉鎖」や
歯の表面を材料でカバーする「ダイレクトベニア」という手法は
歯を全く削らずに対応可能できることも多いです。
下の写真は、22歳の女性。ずっと気になっていた前歯の隙間です。
ダイレクトボンディングで、空隙の閉鎖をデザイン。
実際にコンポジットレジンを接着。
これが、接着力と材料そのものの美しさを生かした、ダイレクトボンディングの1手法です。
欠点はないの?
ここまで、何だかいいところばっかりに見えるダイレクトボンディングの話をしてきました。
確かに、魅力がいっぱいのこの技術。欠点はないのでしょうか。
私たち歯科医師が「歯の健康」という視点からだけ見れば、
欠点はないと言っても良いでしょう。
歯を削る量が少なく、直接接着させるため隙間もでないし、予防歯科の観点からも良い方法です。
ただ、患者さんから見れば、理解してもらいたいことがあるのも事実です。
①セラミックやジルコニア、に比べると「弱い」
強化しているとはいえ、コンポジットレジンはセラミックなどの他の審美材料や金属に比べると
硬さや対耗性の点で劣り、長い期間でそれらの材料よりは早く劣化してきます。
また、自分の歯と同じように、強い衝撃で「欠ける」こともあり得ます。
ただ、かけたらまた詰め直せるというところは
壊れたら作り直しが必要なセラミックなどに比べると
大きな利点の一つになります。
②美しさもセラミックに比べると劣る
歯を比較的大きく削って、形や色を整えるためにセラミックを被せる治療と比較すると
コンポジットレジンによるダイレクトボンディングは、質感、表面性状は劣ります。
まだ、長い期間で飲食習慣により、着色してくることもあります。
③メインテナンスが必要
他の歯と同じように、定期メインテナンスが必要です。
セラミックを被せた方はメインテナンスが不要、ということでは決してないのですが
上記の劣化や摩耗、着色などが起こる可能性があるため、定期的に
クリーニングしたり、研磨したりというケアは必要になります。
まとめ
いかがでしょうか。
歯を削らない治療、ダイレクトボンディングの魅力について
少しでも、理解していただけたでしょうか?
削った歯は二度と戻ってきません。
生涯における歯の健康は、良い歯並び、噛み合わせ以外の観点で言えば
いかに歯を削らないかにかかっていると言っても過言ではありません。
歯科医師に全てをお任せして、簡単に歯を削る前に、
違う方法はないのか、患者さん側も情報を得ることが大切なのです。