こんにちは。「デンタルサロンの窓から」へようこそ。
デンタルスクエアもりおか青山副院長の松浦直美です。
先日のブログで、84歳の私の母の口腔ケア、メインテナンスの話をしたばかりなのですが、その後、「入所者さんの被せ物がとれて、いつもの訪問歯科医師が来るまで待てないのでみてほしい」と、とある施設から連絡がありました。
いらしたのは90歳を超えている高齢の男性。
施設の方が付き添って連れてきてくださり、外れてしまったブリッジと、そのために使えなくなってしまった入れ歯をしっかりと大切に袋に入れて、車椅子から歯科のチェアへの移動も手伝ってくれました。普段から、利用者さんを大切にして下さっていることがよくわかる施設の方の対応でした。
・・・しかし、口腔内を拝見して、唖然としました。
全体に驚くほど汚れがたまり、虫歯で歯が溶けているところが何本もあります。
外れてしまったブリッジは、なんとか戻せはしますが、土台となっている歯は弱って虫歯も進行。
とにかく、口腔ケアが全くできていませんでした。毎月訪問している歯科医師がいるというのに、です。
歯科医師の訪問はせいぜい月に一度。それ以外は、誰かが磨いてあげなければならないのですが、施設の方も一人一人のお口のケアに時間をかけることが難しく、手が回っていないと思われました。
そこは決して「悪い」施設ではなく、スタッフの中にも家族がお世話になっている人もいるのですが、本当にみな親切で評判のよい施設なのだそうです。
ただ、そのことと、入所者さんの口腔ケアが行き渡っていることとは別なのです。
まずは歯ブラシと歯間ブラシを買ってもらい、徹底して歯磨きをしました。(写真はクリーニングを担当した西田歯科医師)
そして、虫歯になっているところをなるべく丁寧に取り除き、ブリッジを再度装着。
担当の訪問歯科医がいるということであまり差し出がましいことを言うのも憚られましたが、このように連れてくることができるのであれば、時々ケアにきてほしいこと、そしてフッ素を利用したり、洗口液を利用したりして、高齢の方でもできる日々のケアをしてみてほしいことを、お願いしました。
施設の方は、「はい、家族と相談してなるべく連れてくるようにします」とおっしゃってくれました。
高齢者の口腔ケアは、肺炎などの合併症の予防のためにも大変重要で、これからますます必要になるにもかかわらず、本当に手が回っていない分野です。その影には、やはり本人や家族、そして一生懸命お世話をしてくださっている介護の方々の知識、技術の不足があることは否めません。
根本解決としてはやはり若い頃からの予防歯科が大切です。
歯並びを良くして虫歯や歯周病を防ぎ、なるべく歯を削らないことです。
そして、それが叶わなかった方でも、遅くとも60歳くらいまでは、お口の中をしっかりをリセットし、合っていない被せ物は作り直し、セルフケアをしっかりと確立し、定期的な歯科医院通院の習慣をつけておくこと。
しかしそれも叶わずに高齢になってしまった方には、やはり歯科の知識のあるプロのこまめな介入が必要です。
このことが、これからの幸せな高齢者を作り、幸せな社会を作る。
美味しい食べ物を味わうのも、家族や周りの人たちとの会話も、清潔で健康なお口があってこそなのです。
親切な施設の職員さんと、高齢の患者さんのお口の中をみて、さまざま考えされられた1日となりました。